作業療法士で安心安全な間取り設計、『安全持続性能』を提唱する安全な家づくりアドバイザーの満元貴治さんの想いを取材しました
目次
- 自己紹介
- どんな事業を展開しているのですか?
- 起業に至った理由を教えてください
- 覚悟と責任
- 事業を通して、社会に働きかけたい想いを教えてください
- 難病の場合の家づくりってどうしているんですか?
- 小さな野望
- 今後の目標を教えてください
自己紹介
株式会社HAPROT(ハプロット)代表取締役で、YouTube「ヨシローの家」を運営している代表の満元貴治です。よろしくお願いします。
元々、作業療法士として11年間、リハビリ病院や総合病院の整形外科等でたくさんの患者さんに携わったり、住宅改修家屋調査に携わっていました。
その経験をを生かして2021年に独立して、2022年4月に株式会社株式会社HAPROT(ハプロット)を立ち上げました。
今は「安心安全な間取りの設計基準」というのを提唱し、建設会社、工務店、住宅業界の実務者、また一般の方向けにセミナー等を行っています。
どんな事業を展開しているのですか?
会社の事業は3つあります。
1つ目は、安心安全な間取り設計の提唱です。
「安全持続性能」という名前で認知活動させていただいています。
それを元に建設会社や顧問工務店へ顧問契約をしてアドバイザーをさせてもらっており、顧問契約した会社へ勉強会や個別相談等を行っています。
2つ目は、講師活動です。
色々な企業や一般向けのセミナー、自治体の方からお呼びいただいたものに講師として登壇しています。
住宅内の事故であったりとか、持続可能な家ついて、お話しています。
それ以外に、年間100棟ぐらい建てるような大手ハウスメーカーの社員研修をすることがあります。
3つ目は、SNSの事業です。
SNSとかYouTubeチャンネルを運営しています。
こちらに関してはどちらかというと事業のメインというよりは宣伝効果として狙っています。メインは顧問と講師業になります。
起業に至った理由を教えてください
私は11年間、作業療法士として従事をしてきた上で、すごく無力感を感じていました。
この無力感っていうのは、例えば怪我した人、病気になった人のリハビリしても、完全に元に戻るってことは難しかったです。
2016年の12月頃に、初めて自分の家を建てました。
間取りや形状など色々調べていく中で、実は家の中での怪我や事故が、多数起こっていることを知りました。
実際に病院勤務時代も住宅内で転倒転落をしたっていうケースも非常に多かったです。
ハウスメーカーや工務店の方は建てる事はプロだが生活導線の中の危険性には気づかずらいのではないかと思いました。
病気や怪我をすると多少は後遺症であったり、重度の後遺症が残る場合もあります。
骨折等で手術をするっていうことはメスを身体に入れるわけです。
傷が残ってしまう場合や痛みが残ってしまうっていうケースも多々見てきました。
作業療法士を目指した理由としては、こういった怪我したり病気になった人を治したい。
助けたいという思いで医療従事者になりました。
自分はそういう気持ちになったはずなのに、人を助けられないという矛盾にすごく無力感を感じていました。
病院の中で患者さんを待って、リハビリをするよりも院外で活動することが、家の中の事故を減らすような働きかけをした方が救える人がもっと増えるのではないかと思いました。
結果的にその人の人生だけでなく、その人の家族の人生も守れるのではないかと考えるようになりました。
これが立ち上げのきっかけになります。
覚悟と責任
私がやっていることは私じゃなくてもいいと思っています。
病院を辞めなくても、2年後3年後に同じようなことをする人がいるかもしれない。
だから同じようなことをしようと思った人の夢をつぶしてしまっている可能性があるってことも考えて、私が責任と愛情をもって遂行しなければならない、やり続けなければならないと思っています。
病院を辞めずに出来たのかもしれません。
でも住宅業界の方からしたら片手間でやっているって思う人もいるかもしれないです。
医療と住宅どっちを片足突っ込んで半端だなって思う人もいるかもしれないです。
だから私は安定を捨てました。
その人達と話して、同じ釜の飯を食ってそれでやっとわかること、認めてもらえる事もあると思います。
私は絶対セミナーとか、プレゼンのときに皆さんにお伝えすることがあります。
作業療法士は責任を持って家を建てることも、設計とか書くこともできせん。
だから自分はそんなに偉そうなこと言ってるけど、皆さんお願いをしないといけない。
こういう家を建ててくださいって、だから決して、どっちが偉いとか、どっちがすごいとかって話じゃなくて「みんなでいい家を作りましょう」って言っています。
事業を通して、社会に働きかけたい想いを教えてください
社会に働きかけたい部分としては2点あります。
まず1つは、住宅の中では実は事故が起こっているということです。
特に転倒転落事故はたくさん起こっています。
転落の事故が起こったときには本人の問題だとか、体の機能をうまく使えないとか、パーソナルな部分ばかり焦点が当たってしまうんです。
住宅本来の問題には目を向けず、環境部分に配慮されていないとか言われがちです。
介護保険では、改修の費用の原則が20万円です。
住宅改修ができず、再度事故で入院するってケースもありました。
やっぱり2度目、3度目の事故が起こってしまうと結果的に寝たきりになると介護者の負担もどんどん増えてしまう。
医療費であったり、介護費っていうのは社会の負担にもなってくる。
だから最初の住まい作りの段階で、新築、リフォームリノベーションを含めて自分たちが将来どういうふうに体が変化していくのか、20年後、30年後を踏まえた場合、家族構成も変化したときに、自分たちが安心安全に住める家にするためにはどうしたらいいのかを考える必要があると思います。
住まい作りの段階で事故を減らすように設定することで、結果的に転倒転落の予防をしていけるんです。
それを元に家族の負担と介護リスクっていうのを減らし、最終的には社会保障を減らしていきましょうっていうので繋げていきたいと思っています。
2つ目は持続性です。
病気になったり怪我したりするのは、ゼロにはできないと思うんです。
病気になるリスクって誰もが持ってますし、どれだけ気をつけたとしても、家の中の安全性だけでは防げない病気とかも出てきます。
それでも、やっぱり安心して家に帰れる環境を皆さんに持っていてほしいと思います。
だからこそ何が起きても、最小限のカスタマイズで住み続けられるような設計住宅が大切なんです。
難病の場合の家づくりってどうしているんですか?
元気なときに将来のことを考えましょう、という活動はもちろんのこと、病気や後遺症を持った当事者やご家族へのアドバイスをする無料サービスも実施しております。
もう間取りを決めている段階であれば間取りを送ってもらってチェックをしたり、ここにこういうのがあればいいんじゃないですかとか提案させていただいています。
事業でやっているので家族を養うためにもお金が発生していかないと会社って成り立たないのはもちろんわかっています。
ただ自分が病院をわざわざ辞めて、独立したっていうことは困っている人を助けたいっていう想いが根本にあります。
日本全国のみんなを救えるっていうのが理想ではあるけど、できることって限られていると思います。
でも例えば病気になっている後遺症を持っている方が今の段階で住まい作りをするってなったときに相談できる場所ってほとんどないんです。
ハウスメーカーになると、病気や障がいに対する理解と配慮に限界があります。
私自身、重量筋無力症の家づくりをお手伝いをいただきました。
当事者から「ヨシローさんが住宅業界にきてくれたから、私たちは家づくりを進めることが出来た」と最後に言われたことがすごく印象に残っています。
病院を辞めて、自分に出会った人が人生が変わったと言ってもらえるような活動をするために、手の届く方だけにでも、とサービスさせていただいております。
小さな野望
私が提唱している安心安全な間取り、転倒転落を予防する設計と、何があっても住み続けられる持続性、この2つが世の中の当たり前になっていただきたいほしいと思っています。
そして満元とかヨシローって名前がなくなってほしい思ってます。
熊本のくまもんってキャラクターのデザイナーって一般人はわからないです。
あんな感じです。
住まい作りの段階とかリフォームリノベーション段階で当たり前に使っていただけるような基準になってみんなからはかわいがってもらう。
いろんな方に愛していただいて、かわいがっていただいて、どんどんアップデートしていけるようになって、結果的に家作りをする方にとっても安心な基準になればいいなと思っています。
自分の満元とかヨシローっていう名前はやはり消していかないといけない。
最終的には自分の名前が消えて、みんなが当たり前になってくれたら、自分の目的を達成したのかなって思います。
今後の目標
会社が2023年4月で会社設立し1年になります。独立した当初はツテも縁もなく苦労しました。
今では少しずつ少しずつですが住宅業界の中で活動に対して賛同いただくことや顧問として入った会社が増えました。
顧問契約をしていただいたり、セミナーに呼んでいただく機会が増えました。
私はこの住宅業界の中で自分のポジションっていうものが明確になってきたかなと思います。
ただ私としてはここで立ち止まろうと全く思ってなくていません。
2023年は2つ目標があります。
1つ目は自治体と関係を気づき一緒になにか動いて行きたいです。
2つ目は医療関係者に対しての発信活動を頑張っていきたい。
自治体に関しては、リフォーム事業のお手伝いがメインになります。居住支援や高齢者が多い地区に対しての自治体が補助金を出してリフォームすることがあるのですが、そこで私の経験が活かせる場合があります。
実は、現在もご相談を受けているところです。
この様な活動が全国にどんどん展開できればなと思っています。
もう1つは医療関係者向けへのメッセージです。
私がそうだったように、病院の中で働くことだけが一つの選択肢だと思いがちです。
でも自分の知識を活かしていきながら事業展開している方も増えてきました。
やはり作業療法士、理学療法士、言語聴覚士っていう職種が横に展開することでいろんな社会課題を解決してほしいと思っています。
この2つはしっかり発信していきたいと思ってます。