徐々に筋力が衰える難病、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを抱えながら、障がい当事者の一人暮らしをサポートするSTAY FREEを経営し、世界一幸せな筋ジス社長の猪瀬剛さんを取材させていただきました。
もくじ
- 自己紹介
- 発病当時の様子
- 念願の一人暮らしについて
- 世界一幸せな筋ジス社長の誕生
- 今後の目標
自己紹介
猪瀬剛です。別名「世界一幸せな筋ジス社長」とふざけたことを言っています笑
現在は、障害を持った方の自立支援のコンサルティングや講演活動をしています。
発病当時の様子
異変に気づき病院で診察
現在、日常生活のほとんどを電動車椅子で過ごし、人工呼吸器を使って生活をしています。
診断されたのは5歳のときでした。
走るのが遅かったり、着替えが大変だったりと、幼稚園で他の子との違いに気づき、検査の結果筋ジストロフィーと診断を受けました。
筋ジス病棟での暮らし
中学2年生からは地元を離れ、長期療養型施設、いわゆる筋ジス病棟での生活が始まりました。
共同生活ということもあり、生活の時間が決められており、自分が望む生活とは程遠いものでした。
そのときに施設内で音楽バンドをやっており、今思うと、外の世界と繋がれる唯一の機会でした。周りの友達が同病者の中で、狭い世界に閉じ込められているような気がしていましたが、バンド仲間といると広く大きな世界にいる感覚があったのです。
この頃から外の世界に出てみたいという思いが強くなりました。
念願の一人暮らしについて
きっかけは先輩の姿
同じ施設にいた先輩が地域で一人暮らしを始めたのがきっかけです。先輩から自立生活に関する様々なことを教えてもらい、挑戦したいという気持ちがますます強くなりました。
施設内で一人暮らしの準備はかなり大変でした。やりたいことはあっても手伝ってくれる人がおらず、ボランティアさんや友人にお願いをして、24歳のときに地域での生活を始めました。
ヘルパーさんに言われた言葉
訪問介護を利用し24時間体制で介助者に支援してもらう生活には、当初は苦い経験もしました。
先輩たちや当時関わりがあった障害者団体の教えの中で、介助者を指導して行くことも利用者の役目と言われ、自ずと上下関係ができてしまいました。介助者を機械のように扱い、横柄な態度だったと思います。
介助者と揉めるうちに「ただ言われたことを、冷静に機械のようにこなす介助者がいいのか、それとも人としての関係がいいのか、どっちがいいのか選んでくれ」と言われました。
最初は「ふざけんな」と思いながらも、人間関係を作りながら生活したいと思うようになりました。初めて障害のない人と本音でぶつかり合い、話していく中で見つけた答えです。
先輩たちから教わったように、自分の責任でやっていくのは当然だけど、介助者とはいえ、体力にも限界はあるし、感情もあるというところをしっかり見極めてお願いすべきだと今は思います。
尖ってたからこそ気づくことができ、いろんな人とコミュニケーションを重ねて、徐々に変わっていきました 。
世界一幸せな筋ジス社長の誕生
訪問介護事業所を設立
始まりは介助者からの相談でした。事業所を立ち上げたいという話があり、もっと自分らしい生活を送れるかなと思い、一緒に起業しました。
社長になったきっかけは、話し合いの中でのノリです。周りに勧められる形で決めました。私自身は経営の知識が全くありませんでしたが、創業メンバー4人のうち1人が、いくつも会社を立ち上げた経験があり、それぞれ得意分野を活かしたからこそできたのだと思います。
自立生活のコンサルティング会社「STAY FREE」
会社名は「ずっと自由にいよう」という想いを込めて付けました。
今は介護事業を退き、自立支援のコンサルティングをしています。障がいがあり、施設や親元で暮らしている方を、さいたま市で1人暮らしの実現に向けてサポートしています。具体的には、福祉サービス利用までのお手伝いや、実際にお話を聞いて問題点があれば一緒に解決したり、講演活動を通じて自立生活の魅力を知ってもらえるような活動です。
今後の目標
障害者も健常者もごちゃまぜにした夢の総合施設
今後も一人暮らしを望む方を見つけ出して、とにかく一人暮らしさせたいと思っています。自分がすべき仕事を考えたら、経験して実践していることを伝えたいと気づきました。それは私たちにしかできないことでもあります。
だからこそ、障害のある人もない人も楽しめる総合施設を作りたいなと思っています。もちろん障害を持ってる人のための施設もあるかもしれませんが、様々な境遇の人が一緒にセミナーや料理を通じて交流できる、そんな空間があるとハッピーになる気がしています。
同じ病気の方へメッセージ
筋ジスという病気は正直、自分にとっては嫌な病気だし、面倒くさいと思うけれど、そのおかげで同じ障害を持ってる人たちを自立させたりとか、それを応援できるのは筋ジスだからできたことです。今はeスポーツもあったり、携帯をいじればLINEでメッセージを送れたり、Zoomで話したりと本当に便利な時代になっています。
こんな時代だからこそ障害を持ってても、諦めずに自分がやりたいことをできるような環境をみんなで作っていきたいなと思います。
今日はありがとうございました!
同じ境遇の方からお話を聞けて、とても勉強になりました!
こちらこそありがとうございました!