出来ることだけ続けたら金メダルを取りました。猫本力さん【多発性硬化症】

当事者インタビュー

今回は、29歳で多発性硬化症を発症するも、現在、会社員として働く一方、障がい者スポーツの全国大会で金メダルを獲得するなど、様々な分野で活躍されている猫本力さんを取材させていただきました。

目次

  • 自己紹介
  • 発症から診断まで
  • 現在の活動
  • 今後の目標
  • 同病者へメッセージ

自己紹介

猫本力と申します。埼玉県在住です。電動車椅子を使用しています。

両手とも不自由ですが、杖を使って10mくらいなら歩けます。

車椅子が入れないトイレなどを利用するときは、車椅子で近くまで行き、少しだけ歩くといった感じです。

東京の職場まで週に4日、電車で乗り換えもして通勤しています。

多発性硬化症の診断を受けてから20年以上になりますね。

病気の影響で眩しいのが苦手なので、普段から医療用のサングラスを使用しています。

発症から診断まで

2001年4月、東京で音楽業界の会社に就職し、忙しい生活をしていました。急にまっすぐに歩けなくなり、視界も歪んでしまい、バイクに乗ってもフラフラでした。

病院に行くと、すぐに検査入院となりました。

はじめは脳梗塞を疑われましたが、原因がわからず、症状は進行していきました。

結局、多発性硬化症の診断が出たのは発症から1年半後。そのときはほぼ寝たきりの状態でしたね。

その後、この病気の権威の先生のもとで治療を開始しました。

現在の活動

障がい者スポーツ

自分で電動車椅子も使用できるようになった頃から様々な活動をしています。今、一番力を入れているのは障がい者スポーツですね。

市役所で紹介され、電動車椅子スラロームと、ビーンバッグ投げをはじめました。

どちらの競技も、2023年の全国障害者スポーツ大会で金メダルを取ることができました。
自分で言うのも何ですが、才能があったのかもしれません。

〜車椅子スラローム〜
車いすを操って、赤と白のピンが置かれたコースを前進、後進させて走り切る「スラローム」。手や腕にも障がいのある重度な車いす選手が参加します。 選手が使用する車いすは、手でこいだり足で地面を蹴って進む通常の車いすと、ジョイスティックを操作して進む電動車いすの2種類があります。

〜ビーンバッグ投げ〜
12cm×12cmの布などの袋の中に、よく乾燥した大豆等を入れて150gの重さにします。その袋を、車椅子に乗った状態で投げた距離を競います。手にも障ががある選手が出場します。

引用:全国障害者スポーツ 大会ガイド” 日本パラスポーツ協会

ループタイ作り

また、最近はループタイを作ることに熱中しています。

私は普通のネクタイを自分では着けられないので、ループタイをしているのですが、売っている物で気に入るデザインがなかなか見つかりません。だったら自分で作ろうと思ったんです。

まずは部品を買おうと、1つ注文したつもりが、100個単位で届いてしまったんですよね。そうなれば、せっかくなので、いろいろなデザインの物を作って、売ってみようかと思っているんです。
自分の名前に因んで猫の足跡のイラストが描かれたものなんかも作っていますよ。

音楽活動

発症前ですが、最初の就職が音楽関係だったこともあり、音楽活動も続けています。

最近では、バリアフリープロレスという団体に所属する聴覚障がいを持つ選手の入場曲をオリジナルで作曲しました。

身体障がい者相談員

月に1日、相談員として福祉センターに行って、障がい当事者やご家族の方などの相談を受けつけています。福祉機器の紹介や、購入方法、制度の案内などをしています。相談員の資格も取りましたよ。

その他にも、自宅マンションの管理組合の役員として管理業務、自治体の身体障がい者福祉会の役員として広報誌作りなど、依頼されたことで自分に出来ることはやるようにしています。

今後の目標

アスリート活動

目標はたくさんあるのですが、まずはアスリートとしての活動ですね。

2028年のロサンゼルスパラリンピックに、こん棒投げと、射撃競技で出場することが目標です。やっぱり1度は出てみたいですね。

音楽活動

音楽に関わる活動は続けていきたいです。電動車椅子ダンスにも挑戦したいと思っています。

今、車椅子ユーザーのダンスとして一般的に広まっているのは社交ダンスのようなものなのですが、そうではなくて、もう少し若者に好まれる、ヒップホップに近いようなダンスを電動車椅子でもできるのではないかと思っています。

自分で作った曲で踊ったりしてみたいですね。

車椅子についての理解を広める活動

あとは、障がい者、老人、若者、子供などは問わず、多くの人に車椅子を使う体験をしてもらう機会を作りたいですね。
手動の車椅子は体験したことがある人が多いと思うのですが、電動を体験したことがある人は少ないと思うんです。

電動車椅子を使っている人は、「よく歩道の真ん中を走行していて何だか偉そうだ。」なんて言われることがあるのですが、そうではないんです。真ん中しか、走行できないんです。

体験してもらい、どういう動きが出来るのか、どれくらいの段差なら越えられるのか、どういう時に不便を感じるのか、歩きスマホをしている人が車椅子利用者にとってどれだけ怖くて迷惑か、そういったことを少しでも多くの人に理解を深めてもらいたいですね。

同病者へのメッセージ

多発性硬化症は、症状も様々ですが、それぞれの身体で出来る事があると思います。

自分自身も、発症後はじめは落ち込みましたが、出来ないことは諦めて、その時の自分が出来ることだけを試行錯誤しながらやるようにしました。

身体に障がいのない人たちは、何でも出来ますが、その分、自分が何をしたらいいのか分からなくて、悩んでいる人も多いですよね。

そういう意味では、私たちは身体が完全に自由というわけではないので、悩む必要がありません。出来ないことは諦めて、出来ることをやるしかないですから。

私もほぼ寝たきりの状態になりましたが、出来ることを続けてきました。そうすると、少しずつ動けるようになり、出来ることも増えました。金メダルを取ることもできました。

出来ないことに悩んでも仕方がないので、いい意味で諦めて、自分に出来ることをやっていきましょう!