遠隔リハビリでリハビリ難民を救う!【小脳梗塞:松本さん】

セラピストインタビュー

小脳梗塞を経験した松本さんは、自身の病気の体験を糧に、リハビリ難民をなくすため、遠隔リハビリと特注動画を事業としてスタートしました。

目次

  • 自己紹介
  • 病気について
  • 発症時について
  • 復職時の大変だったこと
  • 起業しようと思ったきっかけ
  • 今の事業内容を教えてください
  • 今後の目標
  • 同病者へメッセージ

自己紹介

松本安弘と申します、47歳です。

1969年の41歳の時に小脳梗塞を発症しました。

発見は早かったんですが入院までに時間がかかり、小脳の左側が4cmほど壊死してしまいした。

急性期に1ヵ月入院後、半年間リハビリをしてから営業職に復職して2022年12月まで働いていました。

自分がリハビリで困った経験から、今は「COPAIN株式会社」という、遠隔リハビリを提供する会社を作りました

病気について

小脳梗塞とは、脳の血管が詰まり、脳の細胞が死んでしまう病気が脳梗塞です。

それが後頭部にある小脳で起きた場合が小脳梗塞で、脳の他の部分の梗塞とは少し違った症状が現れます。

小脳は手足や眼球、口などの複数の筋肉を協調させて動かしたり、体のバランスを保ったりする機能を担っているため、小脳梗塞ではこれらの動きが円滑にいかなくなります。

また、小脳の隣には生命維持に直結する脳幹があります。脳幹にも梗塞が広がったり、小脳が腫れて脳幹を圧迫したりすれば、死に至る危険もあります。

引用:Doctor File 国立循環器病研究センター病院長 飯原 弘二 先生監修

URL:https://doctorsfile.jp/medication/

発症時について

嘔吐や眩暈でまっすぐ歩けない、立ってられない、左側へのバランス感覚を崩して、左手が震える動き(失調)がひどい状況でした。

発症時はどう思いましたか。

脳梗塞という病気すら知らなかったです。

癌家系なので自分も癌で死ぬと思っていました。

自分がそんな病気になるとは思っていなかったです。

病気なんてすぐ治るもので、リハビリすれば元に戻るものだと思っていたんですが、、

実際、「治らない」っていう現実が受け入れられなくて、最初は死にたいとまで思っていました。

そこからリハビリに前向きはげんだのですか?

頑張ろうと思ったきっかけは、入院していた時に仲良くしていた同室患者さんです。

その方は、だんだん手足とかが動かなくなっていったんですよね。

後でわかったことなんですが筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者さんでした。

(ALSは、リハビリで良くならない病気ということが示唆されていますが、あくまでいち意見として記述しています。)

自分はリハビリで少しでも良くなるのなら、やらなければならないとその時に思いました。

闘病中になにか支えになったものってありますか?

家族、妻には本当に支えられてもらいました。ありがたいです。

でも妻には申し訳ないんですが、実は、飼っていた犬にかなり救われました。

リハビリのために一緒に外に散歩に行くんですが、私がまともに歩けない時は歩幅を合わせてくれるんですよね。

私が歩けなくなると立ち止まってくれました。

病気になると社会との繋がりがなくなってしまって、会社にも行かないし、家の中に閉じこもってしまい、

病院にしか行かない。

そして、病院は年齢層が高い人しかいないからなかなか話しかけづらい。

でも犬と散歩しているとご近所さんや散歩仲間、友達とかに会う機会も多かったので、

犬の散歩はすごく存在として大きかったです。

病気になって変わったことはありますか?

初めて松川さんにお会いした2年前はとにかく焦っていましたが、

今では、「別に自分は自分でゆっくりでいいや」って考えられるようになりました。

病気になったから人を見れるようになったし、いろんな人の話を聞いて少しづつ自分の性格も変わってきていると思います。

それには感謝しています。

たぶん病気にならなかったら毎会社に行って愚痴を聞いて、毎日お酒飲んでの繰り返しだったと思います。

病後の変化

発症から2,3年は人からどう見られてるかってすごい気になったんですよ。

めんどくさいことには関わるのをやめよう。

自分が心地いいところだけでいいや、って思うようになりました。

無くしたものを全部取り戻そうとすると、100人から好かれようってなりますよね。

でもそれも面倒くさいなぁって思ってしまうようになりました。

復職時の大変だったこと

実際復職して大変だったことはありましたか?

私の場合、見た目が普通だからなんで「さぼってんだ」とか「もっと出来るだろ?」とか「飲み会こないんのか」って言う人にはかなり言われました。

でも直属の上司は結構理解があったんで、守ってくれたのが大きかったです。

でも自分のなかで葛藤はありました。

営業マンなんで、外歩き回れない。

歩いたらもう疲れちゃうんで件数絞るしかない。

ただ膨大な仕事量がある。

頭しか回らないのでどうしたらいいのか。

当時は効率化しか考えてなかったと思います。

それしか生きる道がないなと思いました。

最初、復職してから1日おきの16時までの勤務にしてもらいました。

次の日、何もできなかったです。

身体が仕事の調子を取り戻してきたって感じたのは復職して3~4年経ってやっとからです。

それでも夜9時以降はもう起きてられない、歩いてられない状態でした。

仕事の工夫

私は、仕事に対してこだわりがありました。

そのせいで、出来ないことまでやろうとして身体を壊して、

一回状脱水症状を起こして救急車で運ばれたことがあります。

今思えばそれは良くないことだとわかります。

今出来ることをしっかりやる、全力でやるってことが大切だと思います。

起業しようと思ったきっかけ

企業自体がもう4年前ぐらいにするつもりでした。

最初は、介護職員になりたかったんです。

初任者研修までは取りにいきましたが、身体が回復していないのに夜勤は難しいと断念しました。

お風呂入れるのとか、当時の体力だったり自分が倒れるいうのが本音です。

それを諦めて何か頭使ってサポートできる事をしようと思い起業しようとしました。

当時、本読んで事業計画書作っていたんですが、本気で銀行にお金を借りるためのレポート持ってたら周りから大反対されました。

妻とか近所の人にまで反対されて、「2年間ちゃんと勉強をしろ」と言われました。

事業の運用試験を九州の病院と合同で行っていました。

病院に無償でお願いしていたが、利益が見込める目途がついたので病院にアドバイザーとして入ってもらい、COPAIN株式会社を設立しました。

コミュニティを作ったきっかけ

当時大学院に行っていました。

リハビリをどうしようかって悩んでたときに、私達(当事者)が何を求めてるのかっていうのが全く見えてませんでした。

そこで集まる場だけで作ってみようと思って作りました。

今は50人位参加者がいます。

副管理人さんがすごく頑張ってくれています。

そこまで濃い集まりじゃないんですが、管理人として毎朝の挨拶だけはしようと思っていて必ずやっています。

繋がりだけしっかりもっておけば何かのきっかけでぽろっと話してくれるんです

その位の繋がりでもいいのかなって思っています。

会社のビジョンを教えてください

COPAIN株式会社のミッションは

気軽にお節介ができる社会を創る

にしています

ビジョンは3つありまして、

①後遺症に苦しむ人をなくす

②孤独に苦しむ人をなくす

③孤独死をなくす

と考えてやってます。

ビジョンを3つ作った理由はなんですか?

ミッションが気軽にってどう具体的にどんな社会がいいのかって考えて、

どうやったら実現できるかってビジョンを絞って3つにしました。

後遺症に苦しむ人をなくす。

っていうのは私はリハビリで全部良くなるとは思っていません。

まずは、後遺症を前向きに捉えられるところまで持っていきたいなと思います。

治るのがベストなんですけど、患者本人の納得が行く着地点まで持っていきたいと思ってます

孤独に苦しむ人をなくす。

結局一人生きられないんだっていうのが、私が病気になって思った結論です。

孤独に苦しんでいたら、他人のことを考える余裕もないと結論づけました。

孤独死をなくす。

死ぬときまで1人で生きなきゃいけない世界はなくしたいよねっていう想いからです。

絶対なくしたいと思っています。

3つを合わせると自分自身に余裕ができて、他人に対しても気軽に自然とお節介できるようになるのかなと、感じてます。

この3つさえ揃えばミッションになるんだろうと思います。

今の事業内容を教えてください

事業内容は遠隔リハビリ注動画で遠方の自宅で病院のリハビリを受けられるような自費サービスを行っています。

最初に患者さんに問診票とか、今の体の動きを教えてもらって、30分間のオンラインカウンセリングを受けてもらいます。

カウンセリングはセラピストが担当しその人に必要なリハビリの内容を動画に撮影します。

初月は3本、1週間から10日以内にインストラクターが出て、YouTubeのエクササイズ系のような音楽とか、毎日見ても、とてもリハビリ動画とは思えないような工夫をしています。

動画はちゃんと言葉で、注意点とか全部入れるようにしています。

説明だけで20分位かかる動画とかあるじゃないですか?そういうのは絶対やらないです。

あとは一人一人に合わせて作って出来るだけストックしないようにしています

右麻痺の患者さんが左麻痺の動画をみてしまう恐れもあるのでそれは避けたいです。

事前カウンセリングで家にあるものを教えてもらいプログラムを考えます。

椅子の無い家で椅子でリハビリしましょうと言われても、ないものはないですからね。

毎日チャットでやり取りで報告してもらってそれに対してアドバイスや2週間に1度はオンラインでリハビリの動画に対して出来進捗具合をチェックします

できてるようだったら次の動画にステップアップしていきます。

最初3本作って翌月は1本から2本追加から差し替えをさせてもらってます。

なぜその事業内容にしたんですか。

自分自身が入院してもうリハビリで治らないからやる必要ないと言われ、医師に回復期病院への転院を否定されました。

最終的にはセラピストさんたちが今の状態では無理だということで、週に80分だけリハビリを受けられるようになります。

しかし絶対量が少なかったので、専門書読んで自分で自主トレーニングしていました。

私は運よく効果があったんですが、それは素人の危険行為だと言われました。

でも専門家の自費リハビリだと1時間で1万円前後かかってしまうので費用負担が大きい。

介護保険だとどうしても制約が相当あるしてもらう方は月8時間です。

他の方法だと集団指導になってしまって個別性はない。

医療保険だと担当してやっちゃうと月4.3時間まで減ります。

そこで、安価でリハビリを提供できる方法はないかと模索して、動画等使えるものを使って個別性を高めていこうという今の形になりました。

価格は月額で標準的なクラスで月額1万8920円です。

1日当たりで考えれば700円ぐらいで済むように押さえています。

実際、カツカツでやってます。

同じ業界の人には「儲ける気がない」ってよく怒られます。

今後の目標ってありますか?

もちろん仕事としてこれを軌道に乗っけることがまず一番です。

しかし、遠隔リハビリというのが日本でもほぼ論文数が0本なんです。

当社の強みは、研究施設がある医療機関が熊本の武蔵ヶ丘にあり、優秀なリハビリ専門医と理学療法士がアドバイザーで入ってるので、彼らなら遠隔リハビリを突き詰めて、論文も書けますし医学的エビデンスも取ってくれる。

遠隔リハビリというものが確実に患者さんに効果があるということを実証をさせていきながら、リハビリの選択肢の一つに入れてもらう。

今の日本の制度の隙間を埋めると考えてるので、リハビリが受けたくても受けれないというリハビリ難民をなくすっていうのがもう最終目標です。

同病者の方に最後一言

昨日まで出来ていたことが今日できない、という酷な病気だと思います。

私は障害受容って必要ないと思っていて本人が決めることだと思います。

周りから言われてするものじゃなくって、本人が納得して障害受容するのだ、というのが本音です。

もしかしたら身体が辛くて100%うまく行かないこともあると思いますが、人はなにかで頑張れるようになるものだと思っています。