セリーヌ・ディオンさんが発表した希少疾患、スティッフパーソン症候群とは?

スティッフパーソン症候群

2022/12/09、タイタニックの主題歌で有名な歌手、セリーヌ・ディオンさんが、スティッフパーソン症候群であることを発表しました。

当事者である私にとっては衝撃です。

これまでに、musubiでも当事者の方のインタビューを何回か行ってきました。身近な病気の一つです。

今回、改めてスティッフパーソン症候群という病気に焦点を当てて、当事者である私が主観も交えながらお話したいと思います。

医師ではなく、当事者としての目線でお話させていただきますので、多少医師とは見解のことなる内容があるかもしれません。

どうぞ、宜しくお願いします。

スティッフパーソンパーソン症候群とは?

スティッフパーソン症候群(Stiff-person syndrome, SPS)とは、100万人に1人の病気とされ、日本での患者数は数十名程度とされています。

私自身が体感していることは、この病気を知らない人はもちろんのこと、この病気を知らない医師が数多くいるということです。

当事者の方のコミュニティで会話をしますが、「そんな病気は聞いたことがない」、という対応をされる医師も少なくありません。それだけ珍しい病気なのです。

おそらく影響力のあるセリーヌ・ディオンさんのスティッフパーソン症候群の発表により、初めて世界的に大衆が耳にした事になったのではないかと思います。

ニュースでは難病として扱われていますが、正確には、日本においてスティッフパーソン症候群は「難病指定」ではありません。

難病ではありますが、当事者にとっては「指定難病かどうか」が非常に大きな問題なんです。

希少疾患の多くは、莫大な医療費がかかるケースが多く、スティッフパーソン症候群も例外ではありません。

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どんな症状が出る?

スティッフパーソン症候群は、全身の筋肉に硬直症状が現れる自己免疫疾患の一つです。

症状が現れる箇所は様々で、足だけに症状が出る人もいれば、手、体幹、喉など部分的に症状がでる方もいらっしゃるようです。

セリーヌ・ディオンさんの場合は、お話の様子から手足だけでなく、喉への影響も出ているように思われます。

実際に、インタビュー動画でも声を震わせていたことから、喉への影響が感じられます。

症状が悪化すると、嚥下(えんげ)が難しくなったりと歌以上に生活に影響が出る病気です。

この硬直症状は、常に現れるものではなく、刺激をきっかけに発作的に現れる、または悪化する方が多いです。

セリーヌ・ディオンさんも、公式インスタグラムにて、「この痙攣は」と語っています。

おそらく生活の中で、突如現れた痙攣と日々付き合ってきたのでしょう。

悪化した今、医師より診断されたものと思われます。

 

なぜ診断が遅れる?

「時には歩くのも難しい」との記述。これが、医師が診断をつけにくい理由の一つになります。

一般的に、身体が硬直したり痙攣するような症状となると、パーキンソン病・ジストニア症候群・筋萎縮性側索硬化症(ALS)…etcといった見解をもつ医師が多いです。(これは私の体感や周りの経験談による意見です。)

しかし、それらの病気には、ほとんど良化が見られず、一時的に症状がでるスティッフパーソン症候群の症状が当てはまらないのです。

抗GAD抗体の急上昇という特異的な特徴により、血液検査による診断も可能なのですが、初期ではこの抗GAD抗体の変化が見られない方もいらっしゃるようです。

謎の多い病気ということでしょう。

患者数も少ないため、いくつか論文は見られますが未だ確実な診断方法は確立されていないように思います。

 

精神疾患と間違えられることも。「偽性広場恐怖症」

この病気にかかると、共通して話に上がる症状が偽性広場恐怖症です。

簡単に説明すると、「広い空間に出ると身体が萎縮して動けなくなる、動悸が激しくなる。」と言った症状です。同時に不安感を伴う場合もあります。

これは広い空間に限りません。

「心理的に制限をされる空間」すべてを指します。(これは個人の体験も含みます。)

人混みや電車・スーパーの列・階段などなど「一定時間ここにいることが強制されている。」「ここで症状がでたらまずい。」そういった、心理的不安感が増す箇所すべてで症状が悪化したりします

私の場合、家でさえ、人からの目線があるかどうかが症状に影響したりします。

この症状だけ医師に説明すると、初期症状で精神疾患として扱われる場合も少なくありません

一般的には、広場性恐怖症という不安症が当てはまります。

参考:MSDマニュアル「広場性恐怖」について

しかし、スティッフパーソン症候群の方は、「偽性広場恐怖症」といい、この病気になることで広場性恐怖症と同様の症状が現れる傾向があるそうです。

個人的には、この症状が一番周りに理解してもらいにくく、もどかしさを感じています。
(ぜひ、上記リンクのMSDマニュアルを読んでいただきたいです。)

刺激への過度な反応

スティッフパーソン症候群の特徴の一つに、外部刺激に過敏になる、といった症状があります。

私自身、大きな音にビクついたり、急に話しかけられて跳ね上がったりします。

また、注射のような痛みを伴う刺激には得に過敏に症状が誘発される場合が多く見られ、「看護師の理解がないと点滴や採血が難しい。」という当事者の声もお聞きします。

理解の難しい病気だからこそ、認知が広まることが大事。

ここまでの記述で、全てを伝えられたわけではありませんが、少しでも理解が深まっていただけたなら幸いです。

セリーヌ・ディオンさんのニュースにより、たまたま表沙汰になったスティッフパーソン症候群(SPS)ですが、世の中にはまだまだ私達の知らない病気や障がいが山ほどあります。

だからこそ、こういった小さな発信でも医学の進歩と大衆の認知に少しでも力になれれば幸いです。

まだまだ、私自身、様々な病気に対する理解を深めている最中です。

患者の皆様が回復に向かうことを祈ります。

musubiでは、日々病気に関するインタビューやコラムを発信し続けたいとおもいますのでどうぞ宜しくお願いいたします!

参考:

https://rarediseases.org/rare-diseases/stiff-person-syndrome/

https://onl.bz/tMQAsh8