お客様の意思を尊重したケア衣料専門ブランド。株式会社ケアウィル

企業インタビュー

株式会社ケアウィルは、「服の不自由を解決する」をビジョンに掲げ、お客様の意思を尊重したケア衣料専門ブランドです。

服作りを通してどのような社会を目指すのか、代表取締役の笈沼清紀さんにお話を伺いました。

もくじ

  • 「服の不自由を解決する」というビジョンのきっかけを教えてください
  • ミッションの1つ「社会の境界線を滲ませる」とはどんな取り組みですか?
  • 2022年グッドデザイン賞を受賞された「洗濯ネットバック」の開発の経緯を教えてください
  • 起業に至った理由を教えてください
  • 服作りを通して社会へ伝えたいことはありますか?
  • 今後の目標を教えてください

「服の不自由を解決する」というビジョンのきっかけを教えてください

僕たちは、何らかの不自由が現れた際、身体ではなく服に課題があると考えています。単に既製品だけを作るのではなく、障がい当事者の困りごとを解決できるよう考えることで、服の可能性はまだまだ広がると感じています。

そう考えるきっかけは、弊社の看板商品「アームスリングケープ」の制作をしている時でした。

実際に障がい当事者の方にヒアリングを行うと、服の着方も人それぞれあることを知りました。そこで、お客様一人ひとりにとって、着やすく心地の良い服を提供したいと思ったのです。

アームスリングケープは病気や障がいなどにより肩や腕が使いづらい方のために、補助具としても機能し、片腕でも着用できるよう、これまでとは全く新しい視点で設計しました。2021年には既存製品の応用方法が評価され、グッドデザイン賞を受賞しました。

弊社のビジョンは、こういった制作の現場で、当事者を含めたたくさんの方々と話し合いをし、考えていく中で、生まれたのです。

アームスリングケープの商品ページはこちら

ミッションの1つ「社会の境界線を滲ませる」とはどんな取り組みですか?

介護や医療現場で使用される服は機能性は高くても、デザイン性は少ないのが現状です。したがって病院の中で着る服と決められてしまうのです。

弊社は、病院の内と外どちらでも来ていただけるような、着る場所に境目を設けず横断できるようなモノづくりを大切にしています。誰が見ても美しく使いやすいと思われるインクルーシブな製品を目指しているのです。

そのために当事者や介護士、理学療法士などの医療従事者、一流のプロダクトデザイナー、縫製者など、それぞれの領域のプロフェッショナルと協働しています。制作段階から業種の境界線を超えて、一体となることで、新しい価値が生まれてくると考えています。

2022年グッドデザイン賞を受賞された「洗濯ネットバック」の開発の経緯を教えてください

日常生活に欠かせない洗濯が、片麻痺の方にとって、とてもストレスのかかる動作である、との声をいただいたことから始まりました。

ある当事者の方は、洗濯機から物干し場まで、歩行が安定しない中肩掛けバックで洗濯物を運搬し、片手で一枚一枚干していらっしゃいました。

また別の方は、これらの工程が負担なため、室内に干したまま生乾きで着られる方もいました。

洗濯ネットバックでは、こうした一連の動作を一つにまとめるため、脱衣カゴとネットを一体化し、洗濯後そのままバックとして運搬が可能です。

病気になる前に当たり前にできていたことを、出来るようになりたいといった、当事者の意思を弊社は尊重しています。困りごとをモノづくりで応援させていただきたい、そんな思いで洗濯ネットバックも生まれました。

起業に至った理由を教えてください

創業以前は金融やITなどのサラリーマンをしていました。

この業界に興味を持ったのは父がきっかけです。認知症で入院していた父に面会に行くと、水色の浴衣を着ていました。辺りを見渡すと、入院患者さんのほとんどが同じ浴衣を着ていたのです。

その光景を見た瞬間、服装から「父はもう病院から出てこれないんだ」と突きつけられた思いでした。

さらに認知症が進むと、首元に鍵が付いている抑制服を着た父を見た時はかなり落ち込みました。病院に聞けば、前夜に問題行動があったからとのことでした。

見た人にこうした思いを抱かせる服は、「果たして本人の尊厳を考えた服なのか」と疑問が浮かんだのです。

僕自身はアパレル業界は未知でしたが、母が洋服の先生をしていたことも後押しになりました。

こういった経緯から、これまで培ったビジネスの視点も踏まえて服作りに取り組もうと思いました。

服作りを通して社会へ伝えたいことはありますか?

ケアウィルの“will”は「意思」を意味します。社会に僕たちが貢献できることは、みなさんの「意思」を応援するモノづくりをすることだと思っています。

もちろん、ここでいう「意思」とは、僕の意思でもなければ医療専門職の意思でもありません。

「当事者の方の意思」です。

これからも変わらず、当事者の意思を尊重したモノづくりを続けていきたいと考えています。

今後の目標を教えてください

僕は今年で41歳になり、あと24年で前期高齢者になります。もしかしたら途中で障がいを負うこともあるかもしれません。

そうなった時に、自分が心の底から欲しいと思えるようなモノづくりをしていきたいと思います。

これまではカタログで入院服を選んでいましたが、今はオンラインで注文するとすぐに届く時代です。

弊社の製品を必要としてくださる方の元へ届けられるよう流通を整備していくことに加えて、20年後、30年後の価値観を想像しながら事業を進めていきたいと考えています。

本日は貴重なお話ありがとうございました!

僕も入院中は介護服を着ていましたが、バリエーションが少なく、好んで着たいデザインではありませんでした。

機能性かつデザイン性の高いケアウィルさんの製品は、当事者の社会進出のきっかけになると感じました。

次はどんな製品が生まれるのか楽しみです!

HPはこちら:https://www.carewill.co.jp/