500人に1人に発症するといわれる、エーラス・ダンロス症候群という希少難病と向き合いながら、作業療法士(OT)として活躍する岩田あやささん。今回は、病気との向き合い方やOTの仕事観、そして、今後の目標や夢についてお話を伺いました。
目次
- エーラス・ダンロス症候群とは?
- 岩田さんの症状について
- 作業療法士を目指したきっかけ
- 私にしかできない作業療法士の在り方
エーラス・ダンロス症候群とは?
エーラス・ダンロス症候群は、体内でコラーゲンを生成する遺伝子に異常が起きる遺伝性疾患です。
この病気は、コラーゲンは体の結合組織を形成する重要なタンパク質ですが、このタンパク質の異常により、体のさまざまな部分に症状が生じます。
日本では指定難病になっており、約5000人に1人の割合で発症すると考えられています。
一般的な症状は、皮膚が脆くなってしまうことや関節が脱臼しやすくなってしまうこと、立ちくらみや動悸、便秘や下痢を繰り返すなど、人により個人差がありますが、その症状は多様といわれています。
まだまだ日本では症例数が少ないことや診療が進んでおらず、研究が急がれています。
岩田さんの症状について
私の症状も一般的な症状と同様に関節・自律神経・消化器などさまざまです。
まず、関節の症状が顕著に現れており、関節がほかの人より緩くなっています。そのため、捻挫や脱臼を起こしやすく、これまでに肩・膝・指・足首など、さまざまな関節の脱臼を経験してきました。
自律神経の症状では、低血圧による貧血症状や下痢と便秘を繰り返す消化器系の症状もあります。長時間立った状態でいると低血圧を起こして、倒れてしまうこともありました。
下痢と便秘を繰り返す消化器症状もあり、長時間座っていられないなど、生活に支障をきたすこともありました。
さらに、血管が脆いことも特徴のひとつです。血管が脆いため、痣ができやすかったり、出血しやすかったりします。
現在も、さまざまな症状と日々向き合いながら過ごしています。
日常生活での工夫
エーラス・ダンロス症候群の最も大きな特徴の一つは、全身の関節の痛みです。
体の関節が緩いため、筋肉で緩みを補おうとする性質があり、常に筋肉痛のような状態が続いています。私の場合、不足しているコラーゲンは補えず痛みを和らげるために、痛み止めを服用しています。
また、日常生活ではいろいろな工夫をしながら過ごしています。
普段は電動車椅子を使っていますが、仕事の際は装具を装用し、業務にあたっています。また、手の指の関節も柔らかいため、専用の装具を付けて脱臼を予防するようにしています。
脱臼を引き起こしてしまうことが多いため、自分で脱臼を戻すこともありますね。
ほかにも、嚥下障害(食べ物をうまく飲み込むことが難しい障害)もあり、食べ物や水分でむせてしまうことがあります。食事の際は、一気に飲み込まないように、少しずつ飲み込むことを意識しながら食事をするようにしています。場合によっては、食事の形を変えることもありますね。
作業療法士を目指したきっかけ
OTを目指す前は、父親の影響で獣医師を目指していました。しかし、動物アレルギーがあったことから断念しました。
それでも、誰かの「手助けをしたい」という気持ちは変わらなかったため、動物ではなく人に貢献する仕事をしたいと考え、18歳で看護学校に入学しました。
しかし、19歳のときに手首の関節の手術をしました。その後も体の関節の手術を繰り返し、「この手でなにができるのか?」と思い悩む日もあり、落ち込む毎日でした。落ち込んだ末、一度は専門学校を辞めてしまったんです。
手術後は、手の関節を良くするためにリハビリテーションを受けていました。実際に自身がリハビリテーションを続けていくなかで、少しずつできることが増えていく喜びを感じ始めた感覚を今でも思えています。
いつしか「この喜びを多くの人へ伝えたい。」「この喜びを創りたい!」という想いが芽生え始めたんです。
自身の経験が、作業療法士を目指すきっかけになり、もう一度、夢を目指して専門学校に入学することとなりました。
そして、私はOTになる夢を叶えることができました。
私にしかできない作業療法士の在り方
23歳で専門学校を卒業した私は、何度か転職を経験しました。
手術が必要となり休職と退職をせざるを得なくなり、辛い経験もしましたが、現在もOTとして働いています。
患者の立場を経験したことは、私のOTとしての考え方に良い影響をもたらしてくれています。
私自身が患者の立場であるため、患者さんの気持ちがよく分かります。これは私が当事者であり、医療職に勤めるための強みだと思っています。
当事者である私だからこそ、看護師やOTの目線だけでなく、患者の目線や気持ちや想いにも寄り添いながら、リハビリテーションに向き合うことができるのではないかと考えています。
今後の目標
エーラス・ダンロス病は、進行性の疾患のため、最終的には体が動かしづらくなる可能性があります。もし、今後身体が動かしづらくなったとしても、私はOTとして働きたいです。
例えば、オンラインで日常生活を観察・評価し、相談役としてサポートすることもできるのではないかと考えています。直接、現場で患者さんに治療するだけではなく、在宅でOTとして働ける可能性を広げていきたいですね。
今後の目標は、在宅でOTとして患者さんの治療や相談役にあたり、新しいOTの活躍の場を広げていくことです。
